大きなため池「満濃池」(香川県まんのう町)

満濃(まんのう)池は香川県南西部の讃岐山脈の北麓、まんのう町にある日本最大規模の農業用ため池である。周囲約20キロ、水深約22メートル、最大で1540万立方メートルの水を貯めることができる。年間降水量が1100ミリと少ない香川県で、満濃池の水は、下流にあるおよそ60の子池、孫池と水路によってつながれ、讃岐平野の中核となる丸亀市、善通寺市、まんのう町、多度津町、琴平町の2市3町の水田約3000ヘクタールをうるおしている。
700年代初頭につくられ、800年代初めに起きた大決壊を弘法大師が修復したと伝えられる。その後もたびたびの決壊と修復が繰り返され、1184年の堤防決壊後およそ440年間は修復されずに放置され、池のなかに「池内村」と呼ばれる集落が誕生したこともある。
江戸時代初めの1631年に再築され、明治時代半ば以降には堤防の嵩上げ、配水塔の整備が進み、1958年の第3次嵩上げ工事の完成で、ほぼ現在の形に整った。「満濃池および周辺のため池群」として環境省の「重要湿地」に選定されている。
私が初めて満濃池を訪れたのは1998年8月で、丸みを持ってそびえたつ堰堤(えんてい)を下から見上げたときの迫力を、いまもはっきり覚えている。
その夏、香川県は日照りが続き、池の水は60%ほどに減り、配水塔の取水口が2つまで顔を出し、谷筋に沿った上流ではかつて湖内に集落があったことをしめす水田や神社跡がそれとわかるほどに干出していた。「それでもなお、池が大量の水をたたえているのは一目瞭然で、堤の下の排水口からは絶え間なく水が吐き出され、急坂の水路をかなりの速さで下流へと流れ落ちていた」と当時のことを森林文化協会の『グリーンパワー』誌(1998年11月号)に寄稿している。
そして、2025年4月、ほぼ30年ぶりに再訪した満濃池は、2013年に完成した「国営讃岐まんのう公園」(350ヘクタール)に組み込まれていた。お花畑やサイクリングコース、ドッグラン、キャンプ場なども整備された一大レジャー公園のなかで、歴史的な背景をもつ満濃池はバックヤードにたたずんで、「満濃池はこちら」といった案内看板もほとんどなく、入り口からかなり遠い位置にある池を見に訪れる人は少数だ。それでも木々の芽吹きの季節ならではの柔らかな緑に囲まれた池は、かつてと変わらぬ「大きなため池」だった。
徳島県吉野川上流域につくられた早明浦ダムの完成と香川用水の通水によって、讃岐平野の水事情は改善し、1998年当時1万6300個あったとされる香川県内のため池は2024年現在、1万2200個に減っている。農業人口の減少などで使われなくなったため池の、防災上の観点からの廃止も進んでいる。
とはいえ、地域の農業と人の関係を根本から支えるこの池の基本的役割はいまも変わらない。毎年6月15日におこなわれる「満濃池のゆるぬき」(田植え前の時期、田に水を送るために水門を開ける行事)は、初夏の風物詩として多くの観光客を集めてもいる。









