黒沢湿原(徳島県三好市)

この記事は、JiVaラムサール会員が30年前に調査した湿地の現状を、ラムサールセンター会員の山本さんに再調査してもらったものです。
黒沢湿原(徳島県三好市)を訪れて
2024年8月20日、徳島県の西端、吉野川上流の三好市にある黒沢(くろぞう)湿原を訪れた。
黒沢湿原は、三好市中心のJR阿波池田駅から南へ車でおよそ16キロの標高500~600メートルの山あいにある盆地に形成された、四国では数少ない高層湿原の見られる湿地である。面積は約40ヘクタール。もともと耕作放棄された湿田に湿原植物が繁茂してできたもので、希少植物のサギソウ群落は県の天然記念物に指定され、環境省の「日本の重要湿地500」に選定されている。
湿原を一周できるように遊歩道、木道などが整備され、野鳥観察小屋や休憩所、トイレもあって子どもや高齢者、家族連れでも楽しめるようになっている。コースにはイラストマップや植物の解説板が掲示され、環境教育の面からも充実していた。中には展望台があり、高層湿原の美しい景観を一望することができる。
一般に、湿原は湿性遷移の途中段階で最終的には陸地化されるといわれ、乾燥化は避けられない自然現象だが、黒沢湿原でも30年以上前から乾燥化が進み、その対策が課題となってきた。乾燥化が進めば湿原にしか生息できない希少な動植物の生息環境が失われてしまうので、湿原をどのように保全していくかは難しい問題だが、黒沢湿原では木とコンクリートを組み合わせた護岸で水をせき止め、水深を確保する取り組みが見られた。
気になった点を付記しておく。湿原内の水をせき止めた池では、主に園芸種として移入された外来種のスイレンが一面を覆っていた。日本に生息するスイレン属植物で唯一の在来種はヒツジグサで、スイレンとよく似ているが別種である。ヒツジグサは葉が大人の手のひらより小さく、スイレンと見分けることができる。黒沢湿原では両種とも見られたが、この池ではスイレンが優占していた。スイレンの花は美しく、観光資源として人気があるが、ヒツジグサなどの他の植物と競合してその生育を脅かす可能性や、水中に届く光を遮るなどで生態系に悪影響を与える可能性もあるので、その影響を適切に評価する必要があるだろう。
インターネット検索すると、黒沢湿原のスイレンを紹介する観光情報サイトや「スイレンとヒツジグサ見頃 三好市の黒沢湿原」という地元の新聞記事も見受けられる。黒沢湿原にはオオミズゴケやサギソウなどさまざまな希少生物が生息しているので、高層湿原本来の魅力に目を向けて情報を発信してもらいたいものだ。
山本賢樹(ラムサールセンター会員)(写真とも)









