ジンデ池(高知県須崎市)

 高知県須崎(すさき)市は、高知市の南西30キロ、太平洋に面した人口2万人弱の町で、市の南を流れる新荘川河口で1979年、生きたニホンカワウソが最後に目撃された町でもある。
 
 ジンデ池は、市の西側の安和(あわ)地区の丘陵地帯にある面積650平方メートル(小学校のプール2つ分ほど)のため池である。8月18日(日)、ここで市主催の「すさき野外博物館・ジンデ池の生きもの観察会」が開かれた。
 
 ジンデ池は、山麓の湧水を引いて大正時代につくられ、地域の守護神「安和天満宮」に奉納する稲を育てる田んぼを潤してきたので神(ジン)の田(デ)の池と呼ばれてきた。近年は田を耕作する人もなく、長い間放置されたままだった。2018年夏の西日本豪雨を受けて高知県の防災計画が見直されるなか、2019年、利用者のいないジンデ池の廃止が決まり、埋め立てられることになった。
 
 しかし、人里離れたこの池はトンボ捕りの子どもたちの遊び場になっていた。捕虫網を片手に通ってきていた子どもたちはびっくりした。「ぼくらのトンボの池がなくなってしまう」。そんな一人が当時中学1年だった植村優人さんだった。
 
 そこで植村さんは独自にジンデ池の生きもの調査をはじめた。トンボ39種はじめ、絶滅危惧のミナミメダカなどが確認され、池が水生生物の宝庫であることがわかった。植村さんは2020年、その結果をもって須崎市長に面会し、池の存続を訴えた。市長はその熱心さに動かされ、県と交渉。そして、生態系と防災を両立できるような工事に計画変更された池は、ほとんど元のままの形で残された。
 
 植村さんは友人たちと「ジンデ池生物研究所」というNGOをつくり、大学1年になったいまも生きもの調査を継続している。昔からあった池に愛着を持っていた安和地区の人たちも、周辺の森林の環境整備や水路の清掃などで協力していて、この日の観察会にも顔を出してくれた。
 
 面積は小さくてもカエルやトンボやゲンゴロウやミズカマキリの湧くジンデ池がこれからも地域に支えられ、残されていくことを期待したい。おそらく四国にはこうした生物多様性豊かなため池が、ほかにもたくさんあるはずだ。ラムサール条約は、登録湿地だけでなく、小さな湿地、身近な湿地の保全と賢明な利用を求めている。