四万十川河口のノリ養殖サイト探訪 (高知県四万十市)

四万十川は四国西部の高知県内を複雑に蛇行しながら太平洋に注ぐ全長196キロ、流域面積2186平方キロの大河川である。
その河川下流域・河口では昭和30年(1955)頃からノリの養殖がはじめられ、地元の人々によるラムサール条約でいうワイズユース的な利用がおこなわれてきた。しかし近年では、地球温暖化の影響か、中上流部の環境変化等による水質悪化によるものか、生産量は激減している。今回、その実状を知るために、JiVaラムサールの私と田口明男さんで現地調査をおこなった。
まず、四万十市郷土博物館で開催中の企画展「四万十川のアオノリ-川の恵みから町の未来へ」を訪れ、地域の伝統やアオノリの生活史、ノリ養殖の盛衰とそれに対応する新しい養殖技術開発についての知識を得た。ここで養殖されているのはアオノリとアオサの2種類であるが、両種とも昭和50(1975)年代には50トンくらいの生産があったものの、平成に入ると(1989~)それぞれ5~10トン程度に減少し、一昨年(2023)のシーズンには生産量ゼロという壊滅状態になってしまった、という衝撃的な内容だった。その後、四万十川の河床に溜まったヘドロの除去や砂底の平坦化など人の手を加えることにより、2025年のシーズンにはわずかに回復の兆しが見えてはいるようだ。
ノリ養殖は四万十川の本流ではなく、本流の左岸から河口部に流入する支流、竹島川の干潟域でおこなわれている。竹島川は地形的には砂州で形成された入り口が狭小な沿岸湖(ラグーン、潟湖)となっている。ノリ養殖をおこなう四万十川下流漁業協同組合の沖辰巳組合長によれば、この海域で養殖(あるいは天然採取)されるアオサやアオノリの品質は全国一のレベルで、香りが素晴らしく、他地域のノリの倍近い値段で取引されているとのこと。現在の不作の状況を打破することが当面の課題で、高知大学の「しまのばプロジェクト(しまんと海藻エコイノベーション共創拠点事業)」と連携して、原因究明と高温耐性を持った株の作出など、その対応策を研究している状況である。
干潟での養殖復活への取組みと同時に、アオノリについては、陸上のタンク養殖も試験的に開始されている。ノリの養殖・加工事業で老舗とされる加用物産社では、高知大学のプロジェクトから技術支援を受けながら、昨年からこの野心的な取組みに着手した。加用祐都専務取締役によると、水温の安定した地下海水を用い、ノリの成長に合わせて小型水槽から順次大型水槽に移し替えて計画的に生産することで、毎日一定量のノリを収穫することができるという。養殖したアオノリはすべて同社の加工・販売用とし、他社への業務用としての販売はしていないとのこと。
この海域には「今すぐに絶滅するおそれはないが、特徴ある分布や生息状況から、その地域の自然を代表すると認められる種」として、高知県では「注目種」として指定されているアカメLates japonicus(環境省のレッドデータブックではⅠ類Bに記載)が生息している。アカメはビワコオオナマズ、イトウとともに日本三大怪魚のひとつとされ、全長1.5メートルを超える日本固有種の大型魚で、釣り人の間ではよく知られた魚である。沖組合長にこの点についてたずねると、アカメの稚魚や30センチくらいの若魚はこの竹島川ではふつうに見られるとのことだが、食べて美味い魚ではないそうで、漁業対象とはならないらしい。アカメは成長にともない四万十川中流部に遡上すると言われているが、その生態については不明な点が多い。近年ではPITタグや衛星タグ(PSAT)など、魚の回遊経路を追跡する方法も開発されていることからその生態解明が待たれる。
視察、訪問にあたっては高知大学しまのばプロジェクトの平岡雅規先生(プロジェクトリーダー)、難波卓司先生、プロジェクト事務局の西川卓さん、四万十市農林水産課の篠田匠一係長から助言をいただきました。お礼申し上げます。
(土居正典)














