吉野川とラムサール条約

5月10日(土)、徳島市のとくしま県民活動プラザで「ラムサール条約勉強会『吉野川の恵みと人々の暮らしを考える』」が開催された。とくしま自然観察の会主催、JiVaラムサール協力。予想を上回る60人余が参加し、主要なメディアにもとりあげられた。
徳島大学准教授の河口洋一さんが「吉野川における人と生き物の暮らし」、吉備国際大学客員教授の上田幸男さんが「吉野川河口は魚介類と漁業にとって大切な場所」を、地元の研究者ならではの内容で講演し、JiVaラムサール会長の名執芳博さんが「ラムサール条約と『湿地自治体認証』」について解説した。熱心な質疑応答後、「吉野川の価値を多くの市民に知ってもらい、登録への機運を盛り上げよう」とまとめられた。
吉野川は長さ194キロ、流域面積37.5万ヘクタール、河口の幅1.3キロもある「大きな川」だ。高知と愛媛県境の瓶ヶ森(1896メートル)を源流に、四国山地の水を集めて東流し、紀伊水道に注ぐ。関東の「坂東太郎」(利根川)、九州の「筑紫次郎」(筑後川)と並んで「四国三郎」と称される有数の暴れ川で、度重なる氾濫で下流域に肥沃な土砂を堆積し、広大な徳島平野を形成した。
いまは大規模な氾濫、洪水はコントロールされるようになったが、眉山(290メートル)から見下ろす徳島市(人口24万人)周辺は、吉野川、旧吉野川、多数の支流と水路につながれた「水都とくしま」の名にふさわしい湿地都市である。
吉野川河口域は、日本が「ラムサール条約」に加入してまもない1989年、国際的な自然保護団体のWWF(世界自然保護基金)、IUCN(国際自然保護連合)、 ICBP(国際鳥類保護会議)、IWRB(国際水禽湿地調査局)が刊行した「アジア湿地目録」に、ラムサール条約に登録するにふさわしい国際的に価値のある湿地として紹介され、2001年に環境省が「日本の重要湿地500」に、2010年には「ラムサール条約湿地潜在候補地」に選定している。またラムサール条約の提唱で2006年「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)」が発足したときの最初の参加湿地の1つでもある。
しかし、吉野川河口のラムサール条約登録への具体的な動きは見えてこなかった。
生物多様性の観点から登録される資格はあっても、流域に暮らす人々によって農業、漁業はじめ、レクリエーションや憩いの場、観光資源、四国と太平洋をつなぐ有数の港湾など多面的多様的重層的に利用され、ステークホルダーも多岐にわたっていて、合意形成が図られにくかったことは理解できる。とはいえ、吉野川の恵みをさまざまに享受し利用して暮らしている人がたくさんいるということは、この川が昔も今も「賢明に利用」されてきた証でもある。この事実がラムサール条約登録を通じて、国際的に顕彰されることを願っている。














