八代盆地(山口県周南市)

山口県周南市八代盆地

 12月3日、瀬戸内海を渡って、本州で唯一のツル越冬地として知られる、山口県周南市八代を訪れました。標高およそ300メートルの高台にある盆地状の里山で、明治時代からツルの渡来地として知られてきました。昭和30年には、「八代のツルおよびその飛来地」として、国の特別天然記念物に指定されています。
 
 盆地の中央にある野鶴(やかく)監視所で周南市役所のツル担当と「八代のツルを愛する会」のみなさんと会いました。今年は、12羽のナベツルが飛来、3家族と亜成鳥5羽です。宇和盆地と違って、八代では昼は家族単位でそれぞれナワバリをもって暮らし、夜はネグラでともに過ごしているとのこと。ツルを驚かさないように、農作業も10月半ばで終え、それ以降は控えめでした。
 
 ナワバリごとに散らばっているツルたちがネグラに帰る日暮れ前、私たちは家の近くの田んぼに夫婦のツル2羽が来ているという民家を訪ねました。3年前、近くの田んぼにビオトープをつくったところ、翌年からツルが利用してくれるようになったそうで、とても近くからツルが観察できました。ネグラへの飛び立ちまで約25分間、私たちも動きを止めて静かに見守りました。
 
 12月4日午前、ツル慰霊祭に参加しました。八代にはツルのお墓がいくつかあり、人々は長年ケガや病気で死ぬツルを埋葬してきました。コロナの影響で3年ぶり開催の今年、参加者はお焼香をして冥福を祈ります。そしてハイライトは、八代小学校(生徒数15人)の女子生徒たちによる「ツルの舞」でした。素朴で優雅な踊りからは、村の人たちが永年つないできたツルと共にくらす思いがこれからの世代にも伝わってゆく、そんな思いが浮かび、参加できてよかったと思いました。
 
 ラムサール条約で、「田んぼ」は湿地と位置付けられています。今回は、農閑期の田んぼがナベツルの越冬地として利用されている2か所のフィールドを訪ね、熱心にツルの越冬を見守る地元の人たちとも交流できました。
 
 昔から、広大なシベリアで繁殖したツル(ナベツル、マナツル)の大半が、狭い日本列島で越冬しています。越冬できる環境がこれからも守られていくことを改めて願う旅でした。